ハイブリッドワークモデル
ハイブリッドワークにはどのような選択肢があるのでしょうか。組織にとっての効果を最大化するにはどうすればよいのでしょうか。
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![What is hybrid work and what are the benefits of a hybrid workplace](https://scontent-ord5-2.xx.fbcdn.net/v/t39.2365-6/242726067_4384546351580656_3594572683116564124_n.jpg?stp=dst-jpg_p600x600&_nc_cat=100&ccb=1-7&_nc_sid=9170fc&_nc_ohc=akVqDXjxu9gQ7kNvgEmyKOT&_nc_ht=scontent-ord5-2.xx&oh=00_AYBpKLRHJs67yTxAGaAFsslSRg8_rrWtImdxedd1x2b2gw&oe=6690D800)
ハイブリッドワークが可能な職では、ハイブリッドワークが主流の働き方になっています。世界的に見ると、2023年4~5月の期間では被雇用者の25.6%がハイブリッド勤務をしており、7.9%が完全在宅勤務をしていました。
リモートワークであっても生産性はオフィス勤務と遜色ないことは証明されていますが、成功するのに必要な「人と接点がある」「人とつながっている」という感覚が失われるリスクがあります。最新のテクノロジーに支えられたハイブリッドワークは、リモートワークの自律性と対面による社会的・文化的な利点という両方を兼ね備えた働き方です。
ハイブリッドモデルの導入自体はそれほど難しくありませんが、ビジネスでそのモデルを機能させるには、諸事情を勘案してよく計画を練り、勤務場所が分散している新しい働き方に対して戸惑う社員に新たなサポートを提供することが必要になります。
では、適切なバランスを取って成功するにはどうすればよいのでしょうか。
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ハイブリッドワークとは?
ハイブリッドワークは、出社とリモートをミックスして両方の良いとこ取りを狙ったモデルです。例えば、週に3日は在宅勤務で残りの2日は出社する、あるいはリーダーが特定の曜日を決めてその日は対面のスタッフミーティングに参加してもらう、などが考えられます。このようなしくみにより、社員は在宅勤務で享受してきた柔軟性を維持しながら、コラボレーションや心身の健康に欠かせない、同僚との直接のつながりも持つことができます。
それでは、ハイブリッドワークモデルの種類をいくつか見ていきましょう。
リモートファースト
リモートで働ける手段がある場合に大半をリモート勤務とすることを許可するモデルです。
たまにオフィス
リモートをメインにしつつ、対面でのミーティングや、オフィス環境でこそ進められる社員のチームビルディングを活用するモデルです。同僚と顔を合わせたり、重要なチームミーティングに対面で出席できるよう、週に1〜2日は出社してもらいます。
オフィスファースト
このモデルの場合、企業はリモートポリシーを提供するものの、会社側としては大部分の社員にオフィス勤務を選択してほしいと考えています。一部の社員は、必要なときに必要なだけ在宅勤務をすることができますが、積極的に奨励されているわけではありません。
なぜハイブリッドワークなのか?
ここ最近、インターネットの高速化、クラウドコラボレーションツールの登場、健全なワークライフバランスの重要性が盛んに叫ばれるなどの要因から、ハイブリッドワークの人気が高まっています。しかし、このスタイルが本格的に普及したのは、コロナ禍によりあらゆる企業で従来の働き方の継続を早急に断念する必要があったからです。
すべての組織がハイブリッドモデルを採用できるわけではありませんが、金融やハイテクなど一部の分野ではハイブリッドモデルが主流になりつつあります。Facebook、Microsoft、PwC、KPMGなどの大手ブランドも、現在ハイブリッドワークを取り入れています。
KPMG UKの代表取締役であるJon Holt氏は、次のように語っています。「私たちは社員を信頼しています。私たちの新しい働き方では、社員が権限を持ち、1週間の働き方を各自がデザインすることができます。パンデミックは、どこで働くかではなく、どのように働くかが重要であることを証明しました」。
在宅勤務には、社員が失いたくないメリットがたくさんあります。企業が人材を獲得して維持するために、ハイブリッドワークを提供することの重要性が高まっているほどです。実際、パンデミック後に組織が完全にオンサイトワークに戻った場合、社員の30%が転職を検討すると回答しています。
ハイブリッドワークモデルが長期的にどうなるかはまだ分かりません。ポリシー、プラクティス、コラボレーションテクノロジーは、組織が使いこなすにつれて進化していくでしょう。しかし、ただ仕事をするために職場に行くということは、労働生活において必要なことではなくなったと言えるでしょう。
![The advantages of hybrid work - Workplace from Meta](https://scontent-ord5-1.xx.fbcdn.net/v/t39.2365-6/126801575_1067814497067817_9057282572400735571_n.jpg?_nc_cat=111&ccb=1-7&_nc_sid=9170fc&_nc_ohc=Dv_ltatPJbUQ7kNvgHvwji8&_nc_ht=scontent-ord5-1.xx&oh=00_AYBzrfyJfqxnrOXmDFS_OJqgFjHDUQ19HZmCr7swubLoyQ&oe=6690C835)
ハイブリッドワークのメリットとは?
よく練られたハイブリッドワークモデルは、コラボレーション、生産性、社員の満足度を高めるのに効果的です。ハイブリッドモデルを採用する理由としては、以下のようなことが挙げられます。
1.公衆衛生
ソーシャルディスタンスなどのコロナ関連規制がまだ多くの国で実施されており、オフィス復帰への不安はまだまだ払拭されていません。ハイブリッドワークなら、オフィスにある程度の存在意義を維持しながら、人々の安心を守ることができます。
特に、免疫力が低下している人やそうした人を看病している人にとっては、極めて重要なことです。また、ハイブリッドワークの導入により、体調が悪いときは自宅勤務を選択できるため、病気の蔓延を抑えることができます。
2.ワークライフバランスの改善
ハイブリッドワークを導入することで、ストレスの軽減、通勤時間の短縮、仕事以外の活動時間の確保など、ワークライフバランスを改善するチャンスを社員に与えることができます。
社員の50%以上が、少なくともある程度の時間はリモートで働きたいと回答しており、多くの社員が、最も働きやすい場所を自由に選べるという理由で、ハイブリッド型の勤務形態を希望しています。
3.人材プールの拡大
対面式とリモートワークの組み合わせが可能な組織であれば、人材募集の条件を広げ、従来なら応募しなかったであろう人材も呼び込むことができます。
つまり、現地での雇用に縛られることがなくなるのです。遠方在住の人も、週に1日だけ、あるいは会議のときだけオフィスに来ればいいとなれば、その会社で働きたいと思うかもしれません。
4.生産性の向上
パンデミック発生以前から、自宅では気が散る要因が少ないため、リモートワークによって生産性が向上することが指摘されてきました。雇用主もそのメリットを感じています。パンデミック時にリモートワークの手法を採用した後、多くのビジネスリーダーは、組織の生産性に関して少なくとも以前と同じ水準が保たれていることを目の当たりにしたのです。
5.社員の満足度
ハイブリッドワークは、少なくとも一部の時間帯はオフィスの外で働くことができる柔軟性があるため、社員に人気があります。オフィスにいるときの賑やかさが好きな人もいれば、家にいるときの一人の環境が好きな人もいます。ハイブリッドワークによって、両方のタイプに適した従業員体験を実現することができます。また、共同作業の機会もあるため、士気や一体感を高めることもできます。
6.オフィス経費の節減
リモートワークによって、オフィススペースの必要性が減るため、企業はオフィスの賃料や建物の維持費を大幅に節約することができます。冷暖房などの光熱費、印刷代、文房具代などの節約効果は絶大です。
7.企業文化を変える大きなチャンス
この2~3年間に明るい出来事があったとすれば、パンデミックによって、「どこでも働ける」文化への意識改革が進んだということでしょう。リモートワークが進んだ結果、ビジネスリーダーはほとんどの社員が自発的に働いてくれると信じられるようになり、多くの場合、チームマネージャとメンバーの間で思いやりのある関係を強化することができました。
また、ハイブリッド型の職場を作ることは、将来の危機に備えて強靭な文化を構築することにもつながります。すでに多くの社員が在宅勤務をしているため、必要であれば簡単に完全なリモートワーク体制に戻すことができます。
![The challenges of a hybrid workplace - represented by an employee which has adapted to the new way of working: hybrid work](https://scontent-ord5-1.xx.fbcdn.net/v/t39.2365-6/109688953_321406175713270_8245917637905865420_n.jpg?_nc_cat=101&ccb=1-7&_nc_sid=9170fc&_nc_ohc=SBLg_v2YF_wQ7kNvgGsTN9p&_nc_ht=scontent-ord5-1.xx&oh=00_AYCSNhKL9EXnmlSDzyBJKaJqoZbCvH02wtnM2N5kAwo-gw&oe=6690CD42)
ハイブリッドワークの課題とは?
ハイブリッド型ワークプレイスモデルは一見バランスが取れているように思えますが、欠点がないわけではありません。ハイブリッドモデルの課題としては以下の例が挙げられます。
ハイブリッドワークへの期待値の不一致
総じて社員よりも雇用主のほうが、出社勤務に戻すことを強く望んでいます。この温度差は、McKinseyの最近のレポートを見ても明らかです。調査対象となった上級管理職の4分の3以上が、典型的な主力社員が少なくとも週に3日は出社することを期待していると回答しています。
しかし、4分の3近くの社員が週に2日以上在宅勤務を希望し、52%が少なくとも3日はリモートワークを希望していると答えています。
人間関係の維持の難しさ
ハイブリッドチームでの活動は、遠距離恋愛に近いものがあります。信頼関係、定期的な連絡、そしてそれを成功させるための覚悟が必要なのです。
人々が常に一緒に仕事をしていれば、コラボレーションを行う、フィードバックする、サポートを受ける、ミーティングに参加する、チーム内で強固な基盤を築くといったことは比較的容易です。また、全員がリモートで仕事をするようになると、バーチャルコラボレーションに慣れて、定期的なチェックインやオンラインチャットで連絡を取り合う習慣が身につきます。しかし、チームが分断されると、オフィス組と自宅組との間に断絶が生じることがあります。
自発的な交流の不足
職場でするとりとめのないおしゃべりは、多くの人にとって楽しいものです。リモートで働く社員は、オフィス文化、自発的なコミュニケーション、チーム活動などから疎外されていると感じることがあります。職場に物理的に出勤していれば、社員同士の交流が深まり、すぐに近況報告をしたり、仕事帰りに親交を深めたりすることができます。ハイブリッドチームが直面する課題の多くは、社員同士の繋がりを確保できるかどうかにかかっています。
ハイブリッドチームのエンゲージメントを得るための新たなアプローチが必要
リモートワークの社員のエンゲージメントを維持することは大変な作業で、時間もかかります。そのため、一部のリーダーは、このことについて十分に注意を払わない傾向があるようです。以前は、オフィスを歩けば、ボディランゲージに気づき、必要なときに問題解決ができました。今は、直接顔を見ることができない分、人の感情を察することが難しくなっています。オフィス文化を自宅で再現する方法を考えないと、不満が募ってしまう恐れがあります。
オフサイトとオンサイトの社員の扱いの不均衡
良し悪しは別として、オンサイトワーカーの方がリモートワーカーより優遇されているように感じることがあります。リーダーは、オフィスで「見かける」社員をより熱心な人材とみなし、より手厚くサポートするかもしれません。リモートワーカーは、オフィスにいる人よりも目立たないため、研修や昇進の機会から遠ざけられていると感じるかもしれません。
新入社員が経験豊富なスタッフから学ぶことが難しい
これは、ハイブリッドワークの最大の課題の1つです。オフィスで同僚と限られた時間しか過ごさない場合、新入社員がノウハウを学ぶのは非常に難しくなります。それだけでなく、同僚との絆を築くことも、直接の交流がなければより困難なものとなります。その結果、孤立感にさいなまれたり苛立ったりすることもあります。
企業文化への影響
組織への帰属意識は、人がずっとそこにいるときほど高まらないかもしれません。リモートワーカーは、人とのつながりが希薄になり、輪からはみ出し、あまり貢献できないように感じ、最終的には会社になじめないように感じてしまうことがあるのです。チームメンバー全員が、お互いの成功やビジネスの成功に投資していると感じる必要があります。
ハイブリッドな職場環境
ハイブリッドな職場環境を管理する際には、これまで考慮する必要がなかったようなことも、いくつか考える必要が出てきます。大きなものとしては、物理的な空間が挙げられます。例えば、社員が全部で150人いるとして、その全員が同時に入れるようなビルは必要ないでしょう。
火曜日と水曜日しかオフィスに来ない社員もいれば、週末のシフトの社員もいるでしょうから、広いオフィスを用意する代わりにホットデスキングシステムを利用できるかもしれません。従業員がいつ出社するのかを正確に把握し、ニーズに合ったスペースを見つけることが重要です。例えば、当社の場合、一部の国ではオフィスを10%の割合でオープンにしており、出社したい社員に対してはオンラインフォームでリクエストを受け付け、1~2週間で承認しています。
現在、多くの組織がハイブリッドワークの機能を高めるために、物理的な労働環境を大幅に見直しています。現代のオフィスは、デスクがずらりと並ぶフォーマルなフルタイムの職場ではなく、コラボレーションやチームビルディングのための柔軟に活用されるスペースになりつつあります。
また、ソーシャルスペースを充実させることで、オンサイトでのコラボレーションを促進することもできます。クライアントと会うためのハブや、対面でのミーティングやオンラインミーティングのための設備の整ったミーティングルームを用意するのも一案です。また、感染症対策のため、ボタンやハンドルなどに代わる新しいタッチレス技術に投資している企業もあります。
ハイブリッドワークを正しく行うための6つのアドバイス
自宅とオフィスでの勤務時間をやりくりしてくださいとだけ社員に伝えて、うまくいくことを祈るだけでは十分とは言えません。しっかりとしたハイブリッドワークプレイス戦略を策定する必要があります。考慮すべきポイントをいくつか紹介します。
1) ハイブリッドワークのポリシーの透明性
社員に何が期待されているかを明確に示すポリシーを策定しましょう。リモートワークを許可される社員と許可されない社員がいる場合は、その決定の根拠を伝えて、対立や反感が生じるのを避ける必要があります。例えば、以下のような点について説明が必要です。
- オンサイトには何日間出勤するのか?
- オンラインよりも対面の方が効果的に対処できる業務とは何か?
- ミーティングやコラボレーションのために、特定のスタッフが同じ時間にオフィスにいるべきか?
最適なハイブリッドモデルが見つかるまで、新しいポリシーについてフィードバックを受け、微調整をしながら進めていくことが重要です。
2) ハイブリッドワークスケジュール
多くの企業でシフトパターンに応じたローテーションがあるように、ハイブリッドワーカーにも同様の検討が必要です。これにより、社員がいつも同じ人とオフィスにいたり、みんなが在宅勤務をしているときに自分だけオフィスにいたりすることを避けることができます。
ローテーションには、社員がどこで働いているかだけでなく、誰が働いているかも示されるため、全員で同じ情報を共有することができます。または、カレンダーの共有によって出社予定日を把握するという方法もあります。
3) タスクの配分
チームリーダーは、どのような仕事がオフィスや自宅の環境により適しているかに基づいて、スケジュールを最適化するとよいでしょう。
非同期タスクとは、データ入力や1人でのプレゼンなど、他の人のインプットを受けずに完了できるタスクのことです。これは、中断することなくまとまった時間を確保できる、自宅での作業に最適なタスクです。一方、同期タスクはオフィス環境に向いています。グループでのコラボレーション、ブレーンストーミング、意見交換や、創造力が必要とされる作業です。
4) 信頼
信頼は、あらゆるハイブリッドワークプレイスにとってその基盤となるものです。パンデミック時に在宅勤務が成功した後も、一部のマネージャは、リモートワーカーがその自由を利用してよく怠けていると考えています。マネージャは、リモートワーカーを信頼して、彼らが仕事を成し遂げるのを見守り、マイクロマネジメントは控えなければなりません。
Gartnerの調査では、信頼度の低い職場の社員に比べて、信頼されていると感じている社員のエンゲージメントは76%高いことが分かっています。特にリモートワーカーは、自分が一生懸命働いていることを証明するために、より多くの時間を費やさなければならないと感じることが多いため、マネージャが社員への疑念を捨てることは、より穏やかな職場環境を作ることにつながります。とはいえ、社員が満足しているかどうかを引き続き定期的に確認する必要はあります。
5) コミュニケーション
リモートワーカーとのコミュニケーションはオンサイトの場合とは異なるため、より多くの配慮が必要かもしれません。在宅勤務にどのように対処しているかや、IT機器や作業に適した椅子の提供、マインドフルネスのアドバイスなど、踏み込んだサポートは必要ないかどうかについて、より頻繁に確認した方がよい場合もあります。
ハイブリッドな職場環境における社員のエンゲージメントと士気について即座にフィードバックを得るため、定期的にパルスサーベイやざっくばらんな面談を実施することも有効かもしれません。正直に悩みを打ち明けてほしい旨を伝え、誰の意見にも耳を傾ける用意があることを示しましょう。
6) インクルージョン
ハイブリッド環境でインクルージョンを尊重しながらチームがシームレスに協力し合えるようにするための方法については、慎重な検討が必要です。介護者、ワーキングマザー、障がい者など、主にリモートで働く人たちが隅に追いやられることで、元々あった不平等がさらに助長されることのないようにしなければいけません。在宅勤務者には無意識のうちに偏見があることが多いので、オフィスに戻る人と同じ機会を与え、同じように評価されていると感じられるようにすることが重要です。
また、新入社員が仲間外れにされ、人間関係を築けなくなることがないよう、マネージャは新入社員のオンボーディングに特に気を配る必要があります。最初のうちは、ハイブリッドな新しい職場に溶け込めるよう、指導してくれる同僚の隣に座って、ほとんどの時間をオフィスで過ごすのがいいかもしれません。