リモートワークを成功させる方法
リモートワークは定着しましたが、そのメリットとデメリットとはどのようなものでしょうか。そして、リモートワークを成功させるために企業と社員は何をすればよいのでしょうか。ここでは、必要な情報をすべてご紹介します。
多くの社員はパンデミックをきっかけに初めてリモートワークを経験しましたが、このトレンドはその後も続いています。2022年の段階で、少なくとも部分的にリモートワークを取り入れていた米国の労働者は約27%でしたが、現在ではこの割合が50%近くに達していることが調査から明らかになっています。
出社勤務の再開を社員に奨励している企業がある一方で、リモートワークを強化している企業もあります。いずれにしても、リモートワークのメリット・デメリットと成功の秘訣を雇用主と社員が認識しておく必要があります。
リモートワークとは
リモートワークとは、職場以外のさまざまな場所で仕事をすることです。自宅、カフェ、コワーキングスペース、図書館、公園、ビーチも仕事場所になりますし、別の国にいても仕事ができます。
Workplaceで業務を簡素化
オフィス勤務再開の周知からハイブリッドワークの導入まで、Workplaceは業務を簡素化します。
リモートワークの方法
リモートワークのやり方は人それぞれで、仕事の内容によっても変わってきます。営業担当者のようなフロントラインワーカーにとって、リモートワークはモバイルワークを意味します。フロントラインワーカーは、電車、カフェ、ホテルの部屋など、外出先から会社のシステムにログインします。
また、すべての業務をリモートワークで行っている人もいます。2023年の時点で、フルタイム社員の12.7%が在宅勤務です。
リモートジョブの台頭によって起こったのが、フルリモート企業の出現です。このような企業はオフィスを持たず、社員同士はテクノロジーを利用してコミュニケーションを取っています。米国の企業の約16%がフルリモート企業です。
しかし、リモートワーカーが完全にオフィスからいなくなったわけではありません。多くは、打ち合わせや顔合わせのためにオフィスに行ったり、週あるいは月に数回というかたちで出勤したりするスタイルです。最適な働き方は人それぞれであり、リモートワークやハイブリッドワークに関する会社の方針にも影響されます。
また、リモートワークは1人きりで仕事をするものだと思われがちですが、そうとは限りません。ホームオフィスを親しい人やルームメイトと共同で利用したり、コワーキングスペースで他の人と並んで仕事をしたりすることも考えられます。リモートワークの方法は結局、個人やその人が所属する組織しだいであり、常に進化を続けています。
リモートワークのメリット
「リモートワークは成果を高め、エンプロイーブランディングを向上させているだけでなく、最も有能な社員が導入を強く望んでいるポリシーでもあります」と、Gallupのビジネスコンサルタントは述べています。
その見方に間違いはありません。そこで、リモートワークが社員と雇用主にもたらすいくつかのメリットをご紹介しましょう。
リモートワークのメリット(社員から見た場合)
ワークライフバランスが向上する
リモートワーカーは、通勤に奪われることがなくなった数時間を使って、家族や友達と過ごしたり、趣味を楽しんだり、テレビを見たりできます。空いた時間を自由に使えるようになるのです。
より多くのことをコントロールできる
リモートワークによって、働く場所の選択肢が増えるだけでなく、働き方の選択肢も増えます。耳障りな会話や強すぎる空調、あるいはオフィスの自販機のぬるいコーヒーに悩むことはなくなります。働く環境を、自分でコントロールできるようになります。
幸福度が増す
通勤や社内のかけひき、さまざまな制約に対処する必要がなくなれば、人生もはるかに楽になるでしょう。実際、仕事をしている人の86%が、リモートワークになればストレスが減ると考えています。また、77%の人が、新型コロナウイルス感染症の収束後も在宅勤務を選択できれば幸福感が増すと回答しています。
仕事に関する選択肢が増える
リモートワークなら、オフィスの近くに住む必要がなくなるため、仕事や働き方のオプションが大きく広がります。海外で仕事のチャンスを見つけることも、会社のポリシーで許可されればノートパソコンを持って他の国で働くこともできるでしょう。
柔軟性が高まる
リモートワークとフレックス勤務は厳密には同じものではありませんが、リモートワークのほうが勤務時間の選択肢が増える傾向にあります。そのため、子供の発表会を見に行ったり車の修理をしたりするために必要な時間が取りやすくなります。
リモートワークのメリット(雇用主から見た場合)
労働者にとってのメリットはたいてい、雇用主である企業にとってもメリットになります。ここでは、リモートワークが組織にもたらす8つのメリットをご紹介しましょう。
生産性が向上する
リモートワークでは気が散ることなく仕事に集中できるため、さまざまな職種にわたって社員の生産性が高まります。スタンフォード大学の調査では、リモートワーカーはオフィス勤務の社員と比べて9%生産性が高いという結果が出ています。
有能な人材を引きつける
現在、人々はリモートワークを選択肢として提供することを求めています。労働者の98%が少なくともある程度の時間はリモートで働くことを希望していることから分かるように、リモートワークは求職者が求めるメリットであると言えます。
リモートワークを自社で働くメリットにすると、有能な人材を獲得・維持できるようになり、さらに、人材プールにより幅広い候補者を受け入れることもできます。部分的または完全にリモートワークの社員を雇用することにすれば、場所の制約がほとんどなくなり、オフィス近郊だけでなく、海外からも人材を採用することができます。地理的条件の制約を受けずに有能な人材を活用し、真に多様性のある職場を構築できるようになります。
ワークライフバランスが向上する
リモートワークは、柔軟な勤務形態と密接に結びついています。リモートワークでは、社員の勤務時間は変えられないとしても、通勤がなくなる分の時間を自由に使えるようになります。このような柔軟性を特に魅力的だと考えるのが、Z世代とミレニアル世代です。
Deloitteの調査によると、ミレニアル世代とZ世代は仕事の重要性に関する優先順位を変えつつあり、より良いワークライフバランスの実現を遥かに重視するようになっています。つまり、こうした世代を引きつけたいと考える企業は、ワークライフバランスを重視すべきということです。
環境保護につながる
米国では、乗り物での移動が温室効果ガス増加の最大の原因となっています。つまり、自家用車での通勤や飛行機での出張は、いずれも排出量の増加につながるということです。
リモートワークを導入して通勤を廃止し、ビデオ会議を奨励することで、企業のカーボンフットプリントを効果的に削減できます。例えば米国特許商標庁では、特許審査官が働く場所を自由に選べるようにすることで、温室効果ガス排出量を見積りで44,000トン削減しました。
社員エンゲージメントが向上する
リモートワーカーは、オフィスワーカーと比べてエンゲージメントが向上し、満足度も高くなります。フルタイムのリモートワーカーは、リモート勤務がまったくない社員と比べて、仕事に満足していると回答した人が22%も多いのです。したがって、ロイヤルティも高いことは言うまでもありません。また、5年後も今の会社で働いているだろうと回答した割合が、オフィスワーカーと比べて13%も高い結果となりました。採用コストを考えると、リモートワークは無視できない選択肢と言えます。
不動産コストを削減できる
オフィスの家賃は企業にとって大きな出費です。チームメンバーの大半がリモートワークに移行すれば、家賃コストを大幅に削減できます。例えば、米国特許商標庁は特許審査官が働く場所を自由に選べるようにすることで、家賃コストを3,820万ドルも削減しました。
リモートワークのデメリット
多くの社員が希望しているリモートワークは、社員と企業の双方にメリットをもたらしますが、いくつかの欠点もあります。問題の本質を理解することが、こうした欠点を克服するのに役立ちます。
コミュニケーションの問題がある
同じオフィスで働いておらず、顔を合わせる機会もない同僚とは、コミュニケーションが難しくなる可能性があります。また、地理的に離れているため、会社で何が起こっているのかを把握しにくくなります。
こうした問題を取り除く助けになるのが、コミュニケーションツールです。例えば、ビデオ通話・ビデオ会議機能、インスタントメッセージ、グループチャットなどは非常に効果的です。公式でないものや設定が必要なものもありますが、リモートワーカー自身がコミュニケーションの手段を選ぶことができます。さらにVRを併用することで、まるで隣の席に座っているように自然なコミュニケーションをとれるようになります。
孤独感や孤立感が生まれる
同僚と顔を合わせて交流できない状況が孤立感を生み、ひいてはエンゲージメントと生産性の低下につながる場合があります。
リモートワークを成功させるには、組織や同僚から切り離されているという感覚を生じさせないようにする必要があります。オフィスでの世間話に代わるものとして、毎日の連絡やバーチャル会議の場を利用したり、インスタントメッセージを活用したりすることが有効です。コラボレーションツールを使えば、社員が集まるソーシャルスペースを構築できます。
気が散りやすく、仕事とプライベートの線引きが難しい
多くの人が、「趣味や家族との時間をもっと欲しい」という理由で在宅勤務を選んでいます。しかし、仕事とプライベートを分ける明確な境界線がないため、勤務時間中に子供の邪魔が入ったり家事をせざるを得なくなったりして、集中がそがれる可能性があります。
もちろん、オフィスで仕事をしていても、気が散ってしまうことはあります。ある調査によると、邪魔が入って生産性が落ちる時間は、自宅勤務では勤務時間の15~27%であったのに対し、オフィス勤務では20~35%でした。仕事の邪魔になる要素を完全になくすことは不可能ですが、自宅に適切な仕事スペースを設けることが役に立つ場合があります。
詳しくは、「在宅勤務と個人の生活のバランスを保つ」をご覧ください。
際限なく働いてしまう
リモートワーカーは、1日の仕事を終えるタイミングを見極めるのが難しく、いつまでも終わらないように感じてしまうことがあります。パンデミック期間中、英国で自宅勤務をしていた労働者は、パンデミック後に想定される勤務時間を超えて仕事をしていました。
「常時」仕事をしている状態は、メンタルヘルスや生産性に悪影響を及ぼします。マネージャは、社員に期待している勤務時間を明確に示し、社員は自分を律してその時間を厳守する必要があります。
交流する機会が十分にない
「リモートワークでは、仕事での楽しい要素が失われる可能性がある」ことについては、リモートワークを熱烈に支持する人も同意せざるを得ないでしょう。そのため、顔を合わせて交流できる機会があれば積極的に活用する必要があります。それができない場合でも、ちょっとした想像力と優れたコミュニケーションツールがあれば、そのギャップを埋めることができます。バーチャルコーヒーブレイク、リモート飲み会、クイズ、チャット、ジョークやミームのシェアといった取り組みは、すべてリモートワークの一部と考えることができます。
リモートワークを成功させるための7つのアドバイス
初めてリモートワークをする人にとっては、まずそれに慣れることが大きな課題となります。一方、リモートワークの経験がある社員は、仕事に適した場所を選び、適切な心構えで臨むことの重要性をよくわかっています。そこで、リモートワークを成功させるためのアドバイスを7つ、ご紹介しましょう。
1.適切な場所を見つける
自宅の一室でも、コワーキングスペースでも、お気に入りのカフェでもかまいませんが、リモートワークでは仕事を行う環境が重要になります。温度や周囲の音が心地よく感じられ、業務に必要な機器を置くスペースが十分にあり、気が散りにくい場所を選びましょう。自然光が入る場所を選ぶと、モチベーションが高まります。
詳しくは、ホームオフィスの構築に関するアドバイスをご覧ください。
2.スケジュールを設定する
リモートワークでは仕事の柔軟性が高くなり、働く時間の選択肢が増えるのが普通です。しかし、これは非常に良いことである反面、厳しい締め切りがないことで、仕事が生活の他の部分にまで入り込み、ストレスにつながる可能性があります。そのため、自分でスケジュールを設定して、できる限りそのスケジュールを守ることが重要です。
3.きちんとした服に着替える
冗談ではなく、本当のことです。パジャマのまま仕事をしたくなる気持ちもわかりますが、それではきちんと仕事しようという気分になれません。ビデオ通話でも、相手への見栄えが良いとは言えないでしょう。服装は、気分や感情に影響を及ぼすものです。きちんと仕事しようという意欲や自信が湧いてくる服装を選びましょう。また、仕事着に着替えることは、仕事とプライベートをはっきり区別するためにも効果的です。仕事が終わって仕事着を脱げば、気持ちをプライベートに切り替えやすくなります。
4.休憩時間を決める
ランチやコーヒーブレイクのきっかけがないと、リモートワーカーは1日中コンピューターの前で過ごすことになります。休憩はエネルギーをチャージしてくれるものであり、外に出られれば特に効果的です。休憩時間を設定して、1日に少なくとも1回は近所を散歩するようにしてください。どうしても外に出ることができない場合は、屋内で体を動かしましょう。
階段を上り下りしたり、フィットネスビデオに合わせてエクササイズしたり、少しストレッチしたりするだけでも、緊張がほぐれて元気が出ます。
5.とにかくコミュニケーションを取る
リモートワークでは、コミュニケーションがさらに重要になります。インスタントメッセージやグループチャットを使って同僚とコミュニケーションを取り、プロジェクトの状況を把握しましょう。ビデオ会議にも参加してください。何よりも重要なのは、同僚やマネージャと近況を確かめ合うことです。
他の人と話すのが苦手な人も、できるだけチャットに参加するようにしましょう。多くの人が同じように感じるはずですが、リモートワーク中にちょっとした世間話をすることで、孤独感や孤立感をやわらげることができます。
6.自分のコミュニケーションスタイルを見つける
対面で話をしていないときには、ボディランゲージや声による合図が控えめになります。そのため、リモートワーク中は、より明確なかたちでコミュニケーションを取る必要があります。明瞭かつ簡潔にメッセージを伝えて、自分の意図するところが確実に同僚に伝わるようにしてください。
7.支援を求める
1人で働いている社員は、助けが必要なときでも自分で何とかしようとしてしまいがちです。サポートが必要な時に求めることは問題なく、むしろそれが正しい行動です。マネージャにとっては、社員と定期的に連絡を取って状態を把握し、積極的に支援を提供することが重要になります。
リモートワークの可能性
今や多くの人々が、毎日通勤したり会議のために飛行機で出張したりする必要がない生活というものを覚えてしまいました。以前の「ノーマル」に戻ることは考えにくいでしょう。
パンデミック期間中およびその収束後、多くの企業がリモートワークへの本気の取り組みを発表しており、DropboxやQuoraといった企業はリモートワークを率先して取り入れました。
「これでリモートワーク化がますます進み、リレーションシップ管理もリモートで行われるようになるでしょう」と、グローバル人材紹介会社Robert Waltersでプロフェッショナルサービス部門ディレクターを務めるSam Walters氏は述べています。
「ワークライフバランスや柔軟なワークスタイルが脚光を浴びるようになったのは、ミレニアル世代の社会進出がきっかけでした。そして今、リモートワークの義務化が進んだことで、さらに柔軟でバランスの取れた働き方を奨励するポリシーが、ほとんどの労働者から支持されるようになるでしょう」。
2024年にはモバイルワーカーの数が9,350万人に達すると予測されていることからも、オフィス勤務が必須ではないのは明らかです。適切なモバイルテクノロジーさえ利用できれば、どこででも働くことができるのです。
このように、働く場所やフルリモートであるかハイブリッドワークであるかという違いはあるものの、リモートワークは確実に定着しています。それが多くの人の望むことであり、それを後押しするテクノロジーも揃っています。