社員をスキルアップさせるための実証済み戦略5選
社員のスキルアップは、組織が直面する人材問題の解決の糸口になるかもしれません。今回は、社員の能力開発を支援するメリットと、社員のスキルアップとリスキルの方法について考えてみましょう。
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社員が1つのキャリアパスを選び、頑なにその道を進むという時代もありました。今日では、複数のキャリアを持つことが一般的であり、さまざまな役割のためにスキルアップとリスキルを行うことが能力開発の重要な一形態となっています。ここでは、より多方面のスキルが必要とされる未来の働き方に備えて社員の能力を伸ばす方法をご紹介します。
社員のスキルアップが必要な理由
世界が新たな現状に適応していく中、企業は、突如として過ぎ去った時代の遺物のように見え始めたビジネス慣行を見直しています。そして、企業が現状を調査し代替策を検討しているように、社員も同じことをしています。これまで以上に柔軟性が高まり、変化が速くなりつつある未来に向けて、社員の能力を向上させる必要があります。
ハイブリッドな働き方、AIやデジタルライフスタイルの台頭、気候変動への意識の高まり、企業の社会的責任など、さまざまな要因によって雇用の性質が形を変えつつあります。その上、変化はいつ何時起こるかわからず、あらゆることに備える必要があることを私たちは経験から知っています。
社員のスキルアップやリスキルは、不確実性に備え、ビジネスのレジリエンスを高める方法の1つです。これは、ゼロから始めるのではなく、すでにある資産や人材に投資することなので、全面的に受け入れいる企業の多い選択肢です。
LinkedIn Learningの2022年の職場学習レポートによると、人材開発部門リーダーの46%がスキルアップとリスキルが最優先事項だと回答しています1。Computer and Technology Industry Associationのレポートでも同様の結果が報告されており、人事担当者の10人に7人が、今後1年間、スキルアップとリスキルに、より重点を置くことがわかっています2。
動画を見る
Jennifer McClure氏は、起業家、基調講演者、コーチング専門家であり、未来の働き方に関する世界的インフルエンサーとしても知られています。リスキル、スキルアップなどについて彼女の意見を聞いてみましょう。詳細については、以下のインタビュー動画全体を視聴するか、このままこの記事を読み進めてください。
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社員定着率に関する課題
ここ数年の特徴として、社員の流動性が高いことが挙げられます。大量離職時代には、不確実性によって身動きできなくなっていた大勢の人が、突如としていつも夢見ていたキャリアを目指す権利を得ました。また夢には破れたとしても、より先進的な企業文化とより優れた社員体験を実現している会社を求めたのです。
社員定着率は継続的な課題となり、多くの優れた人材が求人市場にあふれました。そして、雇用主はあらゆる差別化要因を打ち出し、競って優秀な社員を獲得しようとしました。福利厚生や特典を増やすだけではもはや十分ではないのです。
大手企業は、将来の職場にも通じる情熱や優先順位を持つ人材を採用できるように、利益だけでなく価値観によって動く、有意義で充実した職場を構築・育成すべく深く掘り下げて研究しています。
社員は自由に転職し、選択肢を模索していますが、それは単なる椅子取りゲームではありません。欠員のタイプとその補充に必要なスキルも変化しています。
仕事の本質に構造的転換が生じ、雇用区分全体の形態が変わり、縮小されたり、なくなったりした区分もあります。変化は絶え間なく続き、そのペースは常に加速しています。旧式のトレーニングや人材開発方法では、労働市場の進化する需要について行けなくなっており、スキルギャップが差し迫った課題となっています。
Infinite Officeへの道のり
メタバース内のどこにいても最高の仕事ができるようになる方法と理由をご紹介します。
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社員をスキルアップさせるメリット
スキルギャップを縮めるにはどうすればいいのでしょうか。なぜそれを気にする必要があるのでしょう。社員をスキルアップさせる5つのメリットをご紹介します。
仕事とプライベートの境界を作る
新型コロナウイルス感染症の流行前から、スキルギャップは大きな懸念事項でした。2019年のKorn Ferryレポートによると、企業は2030年までにスキルギャップにより8.5兆ドルを失うことが予測されていました。
スタッフをスキルアップすることで、自社に完全に慣れており、社風になじんだ既存の社員を通じてスキルミックスに新しい能力を加えることができます。
社員の定着
望まれていない離職はコストがかかるだけではありません。チームダイナミクスに混乱が生じ、ポジションが長期間空席のままになり、最もそうなってほしくない部分にストレスがかかる可能性があります。既存の優秀な社員が、業界のつながりや顧客との強い関係など、かけがえのない強みを持って行ってしまうかもしれません。
社員のスキルアップに役立つ質の高い学習・能力開発プログラムがあれば、社内で成長するという意欲をかき立て、士気を高めることによって優秀な社員を確保できる環境がより一層整います。
社員エンゲージメント
社員エンゲージメントがビジネス上のあらゆるメリットをもたらすことはよく知られています。しかし2021年には、エンゲージメントレベルが10年ぶりの低下を見せ、エンゲージメントが高い社員はわずか36%にとどまりました。幸いなことに、能力開発とトレーニングを提供することで、社員のエンゲージメントが大幅に改善されるだけでなく、今後の仕事に活かせるスキルと能力も向上します。
人材採用コストの節約
既存の社員を維持するよりも、社員を新たに雇用する方がコストがかかります。SHRMによると、1人当たりの雇用コストは平均で約4,700ドルだそうです。ところが、状況によっては、このコストが給与の4倍にまで跳ね上がることもあります。
新しいスタッフの雇用理由がビジネスを成長させるためではなく、スキルギャップを埋めるためだとしたら、新人を迎え入れるよりも今いる社員のスキルアップやリスキルに投資した方がよいかもしれません。
エンプロイヤーブランドの向上
新しい職場を検討する際には、通勤のしやすさやテクノロジーの質のようなこまごまとした現実的なことから、会社の価値観が自分の価値観と合っているかどうかといったより深い問題まで、多くの条件について考えるものです。
Gallupによると、ミレニアル世代の59%が、求人に応募する際には学習と成長の機会があるかどうかをかなり重視すると回答しています3。スキルアップとリスキルのサポートがあるということは、個人の能力開発と専門資格の取得というメリットにつながるため、企業側が感じるのと同じように採用候補者にとっても魅力的な特徴です。
詳しくは、Jennifer McClure氏のインタビュー動画をご覧ください。同氏は、将来的なスキル課題を検討するリーダーにとって、いかに創造性が必要かを説明しています。
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リスキルとスキルアップの違い
スキルアップ
スキルアップとは、社員が自分の現在の専門分野で成長することを目的とし、既存のスキルを基盤として継続的に学習することです。専門資格の取得やマネジメントトレーニングなどが必要となる場合もあります。
リスキル
リスキルとは、既存の専門スキルを必ずしも活用しない(ただし、ソフトスキルは持ち越す場合がある)別種の仕事を引き受ける能力を社員に身に付けさせることを意味します。
スキルアップは、社員があらかじめ決められたコースを進む昇進モデルと密接に関連しているため、従来型のトレーニングや能力開発の形態と見なされることがあります。
新しいチームや部署で事実上ゼロから始めるリスキルは、より最近の能力開発方法ですが、決して重要性の低いものではありません。World Economic Forumは、2025年までに社員の50%にリスキルが必要になると報告しています。PwCの2021年の調査で、39%もの社員が自分の仕事は5年以内に時代遅れになると考えていることがわかりました。
これらの予測の主要な根拠はテクノロジーの進歩であり、これが未来の働き方のトレンドを形成しています。WE Forumによると、データ入力、帳簿作成、工場の組立ライン生産などの自動化が可能な作業は、ソフトウェアとハードウェアに任されるようになりつつあります。
一方、テクノロジーのブームは、データ分析、戦略、デジタルコミュニケーションといった分野のスキルに対する需要が高まっていることを示しています。
キャリアパスは、もはや会社の職務内容や序列で単純に決まるものではありません。社員と協力して、最大の成果が見込めるポイントを見つけることの方がはるかに重要なのです。
社員をスキルアップさせる5つの方法
では、このような背景の変化に逆らって、未来の働き方で必要となるスキルを社員に身に付けてもらうにはどうすればよいでしょうか。社員をスキルアップさせる5つの方法を以下にご紹介します。
社員のスキルミックスを評価し、潜在能力を探す
最初の作業は、今すぐ得られる社員のスキルを特定し、どこでさらにそのスキルを伸ばせるかを調べることです。キャリアパスは、もはや会社の職務内容や序列で単純に決まるものではありません。社員と協力して、社員の意欲や適性と会社のニーズや将来予測との間で最大の成果が見込めるポイントを見つけることの方がはるかに重要なのです。
そのためには、社員との対話と、1つの部門内だけでなく会社全体の視点から社員のスキルを評価する能力が必要です。例えば、IT部門で働いている社員が営業職で成功することがあるかもしれません。
学歴だけを見ない
仕事や人材採用のあり方が変化するにつれ、雇用主にとっての学位の意味が変わりつつあり、職務記述書に学位の要否がまったく記載されないケースも出てきました。
学位は、今日の仕事環境で必要とされる知識があることを示しているとは限りません。また、4年制大学の学位に加え、関連する経験と個人の資質を求めることは、企業が適切な人材を誘致するうえでさらなる負担となります。
AIツールを活用する
AIツールは、関連するキーワードで社員のプロフィールをスキャンできるため、大企業が人材プールをふるいにかけ、スキルの利点を迅速かつ効率的に評価するのに役立ちます。社員がそうしたツールを利用し、自分のプロフィールを更新してデータを最新の状態に保つことで、自分のスキルや意欲を伝えることもできます。
AIは、社員の能力開発をパーソナライズし、社員自らがより詳細に学習を管理できるようにする役割も果たします。CompTIAの2021年のレポートによると、人事部門のリーダーの75%が人材開発アクティビティのパーソナライズに利用するツールを増やす予定だということです。適切なテクノロジーがあれば、学習と日常業務はさらに一体化し、社員は必要に応じて継続的に知識を得ることができます。
優秀な社員を特定し、協力して能力開発プランに取り組む
過去には、序列により社内のスキルミックスが決定されていました。若手として入社した社員は出世の階段を予想どおりに上りながら、必要なスキルや経験を身に付けていったのです。
今日の流動的で変化の速い環境では、社員の能力開発は個人的なものになり、優秀な社員とその上司や指導者との間の継続的な協力関係によって決まることになります。このアプローチでは、エンゲージメントも考慮されます。その中で、社員とリーダーの間で会社の将来と戦略的優先順位について有意義で開放的な会話が交わされるためです。
ソフトスキルを伸ばす
パンデミックは、人間の回復力はかけがえのないものであり、すべての社員のメンタルヘルスを積極的にサポートすべきであることを私たちに教えてくれました。手作業で行われていた定型業務の自動化が進む中、雇用主が強化しようとしているのは人的側面、つまりアクティブリスニングや自己管理といったソフトスキルです。
人間による作業がこれまで以上に重要となった分野でも、こうしたソフトスキルは必要とされています。CompTIAの調査では、人事部門のリーダーの41%が、パンデミック後は、新たにIT従事者のソフトスキルに重点が置かれるようになると回答しています。