リモートワークと心身の健康

社員はリモートワークの自由さと柔軟性を好みますが、人との交流の少なさや、切り替えできないといったことはあまり良いとは思っていません。リモートワーク中の社員の心身の健康をサポートする方法をご紹介します。

リモートワーク | 所要時間: 9分

社員の心と身体の健康や、経済状態を気にかけるのは大事なことです。社員が健康で幸せを感じ、自分に自信を持っていれば、最高の仕事をして、病気で休むことが減り、ほかに仕事を探す可能性も低くなります。これらすべてが、強力でレジリエントなビジネスの構築に役立ちます。

社員の心身の健康の重要性は過小評価されるべきではありません。Gympassのレポートによると、世界の被雇用者の83%は、心身の健康は給料と同じくらい大切だと考えており、85%は勤務先が心身の健康にもっとケアしてくれれば現在の職務に留まる可能性が高くなると答えています。

リモートワーカーにとって、心身の健康に関する問題は、ハイブリッドワーカーやオンサイトワーカーのそれとは少し異なるかもしれません。なにしろ、リモートワーカーは同僚のデスクに急に立ち寄って雑談したり、問題解決の手助けを求めたりできるわけではないのです。また、職場の友人と昼食を取ることも、冷水機の周りに集まってうわさ話に花を咲かせることもできません。それどころか、人との交流は画面越しのコミュニケーションに限られています。このように、自然な行動や、面と向かっての触れ合いがないのは辛いことかもしれません。では、どうすればよくなるのでしょうか。

リモートワークが心身の健康に及ぼす影響

リモートワークが心身の健康に及ぼす影響

リモートワークのメリットから考えましょう。まず第一に、毎日の通勤に耐える必要がありません。交通渋滞に巻き込まれたり、電車にすし詰めにされたりするのは、多くの人にとって楽しいことではありません。それが、ゆっくり起き、きちんと朝食を取って、犬を散歩に連れて行った後にスリッパのままでふらりとホームオフィスに向かう生活に変わるのですから、大変な違いです。いつどのように働くかをコントロールできれば、さらに良いでしょう。

このような自由があるのなら、98%ときわめて多くの労働者が少なくとも部分的なリモートワークを希望するのもさほど不思議ではありません。ただし、多くの人々の心身の健康にプラスの影響をもたらす一方で、リモートワークにはマイナス面もあり得ます。

リモートワークでは孤立の可能性がある

物理的な職場の騒音がないうえ、同僚から離れていることで、孤独感や孤立感が生じることがあります。実際、リモートワーカーの23%が、孤独感が最も辛いと答えています。

特に、外向的な性格で、誰かに自分の考えを話して意見を求めたいような人は社会的に孤立していると感じるかもしれません。一人暮らしのリモートワーカーも、一日中誰とも意味のある会話をしないと気分が落ち込むことがあります。

日常的な人との触れ合いや、チームの一員としての活気を失うと、慢性的な意欲の低下、疲労、集中力の欠如につながる可能性があります。

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リモートワークは燃え尽き症候群を引き起こすおそれがある

リモートワークは燃え尽き症候群を引き起こすおそれがある

在宅勤務の場合、健康的なワークライフバランスの維持は必ずしも容易ではありません。24時間365日仕事のツールにアクセスできる社員は、勤務時間外にログインするという習慣にいつのまにか陥りやすいものです。長時間動かずにデスクに向かい、物理的にオフィスにいない穴埋めをするために、オンサイトの社員以上に貢献しなければならないと思うかもしれません。

そして間もなく、仕事から離れられなくなっていることに気づくのです。このような「常にオン」の文化が高度のストレスの原因となり、放っておくと最終的に燃え尽き症候群につながる可能性があります。

リモートワーカーが辛い状況にいる兆候

社員が常にオフィスにいるのであれば、社員が辛い状況にいることを示す視覚的な手がかりや行動の変化に気づくのははるかに容易です。例えば、普段より静かだとか、疲れ切っているように見えるといったことです。

さらに、リモートの社員にとって、自分が抱えている問題を話すために上司を訪ねることは簡単ではありません。そのため、リモートワーカーのマネージャは特別に直感を働かせる必要があります。幸い、リモートワークにおける心身の健康が低下していることを示す、注意すべき兆候がいくつかあります。例えば、次のようなものがあります。

ミーティング中にカメラが常にオフになっている

以前はミーティングにビデオで参加していた社員が、一切カメラをオンにしなくなった場合は警戒が必要です。社員が以前ほど目立たなくなった場合は、精神的に辛い状況にいる可能性があります。メンタルヘルスが急に悪化したため、毎朝服を着るのが面倒になり、誰とも顔を合わせたくないのかもしれません。

生産性が落ちている

締め切りに間に合わなかったり、仕事の成果や質が落ちている場合も警鐘を鳴らす必要があります。社員が集中力を失い、次第に仕事から切り離されているように感じていることを示している場合があります。

チームメンバーの仕事上の習慣が急に変わったことに気づいた場合は、その人の今の気持ちについて冷静に話をするタイミングかもしれません。

メールやメッセージの返信が遅い

1日に受信し、対応しなければならないメッセージの量に圧倒され始めている可能性があります。

普段は熱意のある社員のメールやメッセージへの返信が突然遅れだし、どうしても必要な場合にだけ連絡をしてくるようになります。これは、不安を感じ、一息つく時間を必要としていることを示しています。

ミーティングでのやり取りが減る

辛い状況にいる社員は、まず間違いなくバーチャルミーティングでの積極性を失います。その態度は、以前より控え目、あるいは無関心になったように見えるかもしれません。また、ミーティングが終わる前にいなくなったり、出席しないことについての言い訳をすることもあるかもしれません。人はつながりを感じなくなると、貢献しようという気持ちが薄れます。

働き過ぎ

雇用主は勤勉な社員を好みますが、献身的であることと神経が衰弱するまで働くことは紙一重です。社員が四六時中オンラインであることに気づいたり、変な時間にメールを送ってきたりしていたら、仕事を切り上げづらくなっている可能性があります。

Bufferのレポート「State of Remote Work 2023」では、リモートワーカーの81%が所定労働時間外に仕事のメールをチェックすることを認めており、そのうち63%は週末、34%は休暇中にもチェックしています。

リモートワークにおける心身の健康をサポートする8つの方法

リモートワークにおける心身の健康をサポートする8つの方法

ここまで述べたように、リモートで働く社員の管理は、社内で働く社員の管理とまったく異なります。以下のアドバイスを参考にして、リモートワークの健全なワークライフバランスをサポートしましょう。

  1. 社員がどのように感じているかを調べるためにアンケートを実施する

    匿名の意識調査は、チームのメンバーがどのように感じているかを判断するのに適した方法です。意欲を感じているか、評価されていると感じるか、燃え尽き症候群の問題があるかなどを尋ねましょう。また、現在のビジネスの運営方法が、心身の健康にプラスとマイナスのどちらの影響を与えているかということについての社員の考えも知ることができます。このような質問により、組織内のメンタルヘルスやリモートワークに関する有益なインサイトを得ることができ、ストレスに対処するために何をすべきかがわかります。

    組織が心身の健康を大切にしてくれていると答えた米国の被雇用者が4人に1人に満たないことを考えると、実態調査の準備をした方が良いでしょう。

  2. 心身の健康のメリットを提供する

    リモートで働く社員の健康と幸福を増進するために必要なツールやサービスを提供しましょう。例として、ウェルネスアプリ、バーチャルフィットネスクラス、ジムのメンバーシップ、アクティビティトラッカー、ウェルネス・ファイナンシャルコーチ、士気を高めるための特典や報酬(イベントの無料チケットや食事など)があります。

    選択肢は無限にあります。このような特典を無料または割引価格で提供すれば、経済状態に関係なく、誰でも利用することができます。

  3. 近況確認を定期的に行う

    リモートの社員と、できればビデオ通話で1対1の面談を定期的に行いましょう。雑談の中で、相手が話していること(そして話していないこと)に十分注意します。仕事や家庭生活について肯定的に話しているでしょうか。皮肉っぽく、不安で気が沈んでいる様子ではないでしょうか。

    チームメンバーとの定期的な近況確認によって、リモートワークにおける心身の健康について的確なインサイトを得ることができます。このような雑談は信頼の構築に役立つため、最終的に、社員はサポートされている実感を得て率直に話をしてくれるようになります。

  4. 職場と家庭の境界線をはっきりさせる

    リモートで働く社員にとって、仕事と家庭の境界線は曖昧になりがちです。仕事の終わりにスイッチを切って、自分の時間を作ることがどれほど重要かを伝える必要があります。

    しょっちゅう時間外に仕事をしたり、メールを送ったりしている社員に気づいたら、その人に連絡を取って、燃え尽き症候群に悩まされていないかを確認してください。そして、仕事の邪魔になるものがない専用の作業スペースを自宅に確保することをすすめましょう。また、ノートパソコンに「仕事用」と「個人用」のログインを別々に設定し、その2つを区別できるようにしても良いでしょう。

  5. 柔軟性を持たせる

    可能であれば、柔軟な勤務形態を許可してください。こうすると、リモートの社員が私生活と仕事のバランスを改善し、燃え尽き症候群を回避するのに役立ちます。

    仕事と育児などの家庭の用事の両立に悩んでいるリモートワーカーがいるかもしれません。期限を守って高水準の仕事をし続けている限り、自身の作業スケジュールの設定を任せることで心身の健康が大幅に改善されます。

  6. 休暇の取得を奨励する

    誰でも、ときには仕事を忘れて充電するための休暇が必要です。特に疲労の兆候が見られる場合は、年次休暇を使うよう社員に促しましょう。

    どこかへ出かけなくても、自分のために休養を取るのは有益なことです。睡眠不足を解消するだけでも、心身の健康に驚くほどの効果がもたらされることがあります。

  7. 堅苦しくないソーシャルスペースを作る

    リモートワーカーは、職場の社交的側面を経験する機会を逃しがちです。チームの交流会用のオンラインコミュニティハブを作ることで、これを回避できます。メタバースでは、各社員のアバターを作成することもできます。それにより、物理的な職場の社会的性質を再現した3Dバーチャル環境で、他の利用者とコーヒーを飲んだり、雑談したり、ゲームを楽しんだりすることができます。

  8. 模範を示す

    リーダーやマネージャ、またはリモートワーカーは、自分の心身の健康を優先することで良い模範を示すことができます。

    ワークライフバランスを重視しましょう。つまり、緊急性のないメールは勤務時間外にチェックせず、きちんと昼休みを取り、家族との約束を守ることです。必要なときに小休止を取ることで、他の人も同じことをする気になります。

    ポジティブなワークライフバランスを尊重するリモートワーク文化は、時間が経つにつれてビジネスにも良い影響を与えるようになります。支援環境を構築し、健康とウェルネスに投資する組織は、生産性の向上、評判の向上、エンゲージメントの向上といった見返りを得ることができるでしょう。

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