リーダーシップの問題解決スキル

毎日のように問題の沈静化に追われてはいませんか。より高い成果を上げるリーダーになるために、今こそ問題解決スキルを磨くときです。

リーダーシップ | 所要時間: 8分
リーダーシップにおける問題解決とは

リーダーシップにおける問題解決とは

問題解決とリーダーシップとの関係を説明するにあたっては、基本的な定義から始めるのが一番です。オックスフォード英語辞典は、問題解決を「困難な事柄や複雑な事柄の解決方法を見つける行動」であると説明しています。

Chartered Management Institute (CMI)は、これをもう少し詳しく説明して、問題を次のように定義しています。「物事の現状とあるべき姿の間の距離。問題解決とは、この2つの要素の間に「橋」をかけること。このギャップを埋めるには、物事の現状(問題)とあるべき姿(解決方法)を把握する必要がある」。

職場での問題解決とは、日常業務で生じる問題や課題に対処することです。これには、製造の遅れや顧客からのクレームから、スキル不足、社員の対立に至るまで、あらゆることが含まれます。

リーダーが目指すのは、組織にとって意味のある方法で問題解決に明快さと目的を持たせることです。最終的な決定権はリーダーにありますが、解決方法を見つけるのは、社員を含む主要なステークホルダーが参加する共同作業です。

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問題解決のプロセス

問題解決に当たるリーダーは、次の4つのステップに従う必要があります。

  1. 問題の根本原因を特定する – 事実関係を調査し、関係者からフィードバックを受けます。

  2. 可能な解決方法についてブレインストーミングする – できるだけ多くの人からアイデアをもらってさまざまな視点を得ます。

  3. 解決方法を評価する – 実行可能な選択肢のリストを作成し、最適なものを選択します。

  4. アクションプランを導入して評価する – すべてのステークホルダーに解決方法を伝え、理由を説明します。

企業がますます複雑な課題に直面する中、MIT Sloan School of Managementが「問題主導型リーダーシップ」と呼ぶアプローチを導入しているリーダーもいます。このようなリーダーは、部下の管理に集中するのではなく、「挑戦的な」問題の解決に向けた熱意によって他の人々に刺激を与えます。このようなリーダーシップスタイルはすべての状況に適しているわけではありません。しかし、イノベーションと起業家精神が求められる環境では効果を発揮する可能性があります。

問題解決を効果的に行うリーダーは、効率を高め、コストを削減し、顧客満足度を向上させて、戦略的な目標を達成できます。一方、解決せずに放置された問題はスパイラル状に広がり、最終的には企業全体の健全性とパフォーマンスに影響を及ぼす恐れがあります。

リーダーシップに問題解決が重要である理由

リーダーシップに問題解決が重要である理由

リーダーシップの問題解決スキルの重要性を過小評価すべきではありません。考えてもみてください。ビジネスには思いどおりにいかないプロセスややり取りがつきものです。そのような障壁を乗り越えるという決意はもちろん、そのためのノウハウを持つことが、職場を誰にとってもより良いものにするうえで不可欠です。実際、2022年の調査によると、問題解決は、英国の社員がリーダーに求めるスキルの上位5つに含まれています。

問題を効果的に解決する方法を学ぶことで、組織にさまざまな方法でメリットをもたらせる可能性があります。具体的には、次のようなメリットがあります。

意思決定の質の向上

複雑な問題を明快で合理的な考え方で解決できるスキルは、意思決定に役立ちます。誤った結論に飛びつくことなく、最終決断を下す前にそれぞれの決断の長所と短所を自信を持って比較検討できるようになります。これにより、チームや組織全体にとって最適な選択が可能になります。

課題の克服

どれだけ経営を引き締めても、障害に直面することは必ずあります。どんなに成功していても、ビジネスに課題はつきものです。

優れた問題解決スキルを持つリーダーは、問題を予測し、問題が発生したときに備えて対策を講じることができます。こうしたリーダーは、必要であれば素早い決断で戦略を調整する能力も兼ね備えています。

創造性と革新性の促進

創造性は、特にこれまで経験したことのないような問題を解決しようとするときに役立ちます。人とは違う考え方をするリーダーは、優れたイノベーターになる可能性があります。さらに、あらゆるアイデアを歓迎する安全で偏見のない環境を作ることで、既成の枠にとらわれない考え方をチームに促すこともできます。

コラボレーションの促進

問題は共有されたらなかば解決したも同然、ということわざがあります。成功するリーダーは、1人で問題を解決するのはチームで問題を解決する場合よりもメリットが少ないことを認識しています。この認識から生まれるのがコラボレーションの文化です。この文化は、リーダーとチームメンバーの間だけにとどまらず、一緒にプロジェクトに取り組む同僚同士にも生まれます。

信頼関係の構築

リーダーに頼れば問題を迅速かつ効果的に特定して解決できるとチームメンバーが知っていれば、そこに信頼関係が生まれます。また、問題を抱えて苦しんでいるときに、リーダーに気軽に相談するようになります。

チームメンバーが問題の影響を懸念する場合は、リーダーに話すことを避けるかもしれません。Qualtricsによると、フロントラインスタッフの40%がリーダーを信頼していないと回答しています。

リスクの低減

潜在的なリスクを予測し、それを緩和するための措置を講じることができれば、組織を損害から守るための体制が強化されます。リーダーが優れた問題解決スキルを身につけることで、不確実な時代であっても十分な情報に基づいた意思決定を行い、高コストにつながる誤りを回避できます。

士気の向上

積極的かつ冷静に問題に取り組むリーダーは、チームの士気を高く保つうえで非常に重要です。トラブルの兆しが見えただけでパニックに陥るようなリーダーなど誰も望みません。社員は、難局を乗り切ることができる有能な人物がいるという安心感を求めているのです。

リーダーが直面する問題とは

リーダーが直面する問題とは

リーダーは、あらゆる挫折や課題に直面する可能性があります。実際、何の問題も起きずに1日が終わることなどおそらくないでしょう。

リーダーが直面する一般的な問題には、コミュニケーションの壁、チームの不和、生産の遅れ、財務目標の未達などがあります。一例として、職場で直面する可能性のある3つの一般的なシナリオとその対処法を示します。

チームメンバー同士の対立

問題: 派閥が生まれ、緊張がコミュニケーションに影響を及ぼしているため、チームが本来のように効果的に機能していない。

解決方法: チームメンバー全員にオープンで率直なコミュニケーションを奨励することで争いを解決します。各人の責任と期待を明確に定義した役割を確立し、チームビルディングセッションを定期的に設けて、団結と一体感を促進します。

時代遅れのテクノロジーによる生産性の低下

問題: ハイブリッドワーカーやリモートワーカーが仕事を適切に行うための最適なツールを持っていないため、誰が、いつ、どこから、何に取り組んでいるのかを把握できない。

解決方法: 既存のテクノロジーを評価して新しいソフトウェアやデバイスにアップグレードするとともに、何を必要としているか社員に意見を求めます(社員の52%が、仕事に関連するソフトウェアが古くて使いにくいと回答しています)。チームのコラボレーションや仕事に必要な情報への安全なアクセスを可能にするアプリを提供しているプラットフォームを利用しましょう。

カスタマーサービスへのクレーム

問題: 顧客への返信が遅すぎる。電話対応やメールへの返信に時間がかかりすぎるため、クレームが増えている。

解決方法: 顧客からの問い合わせを受け取った瞬間から何を行うべきかについて、標準慣行を定めます。反復タスクを自動化し、顧客がメール、ウェブチャット、電話、ソーシャルメディア、テキストなど、複数のチャネルから連絡できるようにします。

リーダーに求められる問題解決スキルとは

リーダーに求められる問題解決スキルとは

多くの場合、問題解決は経験を通じて学ぶもので、特に最初は失敗がつきものです。問題解決スキルには、継続的な学習、好奇心、敏捷性が必要です。これらを通して、間違えた場合に何をすべきかについての直感が磨かれます。時間は優れた教師となりますが、リーダーの問題解決スキルは、ワークショップ、メンタリング、トレーニングプログラムを通じて磨くこともできます。

リーダーが問題を解決するために必要とする重要なスキルには、次のようなものがあります。

効果的なコミュニケーション

問題が生じると不安になるものですが、パニックを周囲に伝えないよう、冷静さを保つことが欠かせません。まずは事実を明らかにしてから、主要なステークホルダーに問題を明確に伝えることが重要です。また、解決に取り組んでいる人々を励まし、問題が解決するまで目の前のタスクに集中させ続けることも必要になります。批判的なフィードバックを提供し、チームメンバーに責任を持たせることもときには必要です。

ここで重要なのは透明性です。組織全体でオープンで率直なコミュニケーションが取れていないと、サイロ化が進み、修正が追いつかないほど多くの問題が発生する可能性があります。

分析的インサイト

リーダーとしての目的は、問題の根本原因を見つけることです。これにより、その場しのぎの対応に終止するのではなく、永続的な解決方法を見つけることができます。データを分析し、関係者と話し合い、明確な行動パターンを探すことで、問題がビジネス全体にどの程度影響を与えているかを評価する必要があります。

分析的思考は、解決方法を提案し、正しいと思われる措置を講じる際にも重要です。

心理的安全の文化の促進

問題解決を促進する環境づくりはリーダーの責任です。安全でオープンかつインクルーシブな職場では、チームメンバー全員が安心して自分のアイデアを出すことができます。自分の貢献が批判や嘲笑の的になっていると感じることなどありません。また、長年にわたって確立されてきたプロセスやシステムの有効性に疑問を投げかけても、はねつけられたと感じることもありません。

責任のなすり合いをしない

間違いは必ず起こるもので、成長と発展の一部です。物事がうまくいかないときは他者を非難するのではなく、学習の機会と捉えましょう。

不具合や問題を効果的に解決するには、その原因を特定し、必要に応じてフィードバックを提供する必要があります、しかし、それは責任転嫁とは違います。そうではなく、同じ間違いを繰り返さないための解決策の発見に向けて取り組む必要があります。

感情的知性

リーダーにとって最も重要な問題解決スキルの1つは、感情を理解し、他者に共感する能力、つまり感情的知性です。これは、社員の問題を認識する際に極めて重要です。EY Consultingの調査によると、米国の労働者の90%が、共感力のあるリーダーがいると仕事の満足度が高くなると考えています。

リーダーが怒りや不満を抱いて問題に取り組むと、軽率な決断をしたり、重要な情報を見落としたりする可能性があります。一方、冷戦沈着に対処すれば、フィードバックを求める姿勢が強くなり、問題をより幅広い観点から捉えられるようになります。

柔軟なマインドセット

問題解決は、常に柔軟な姿勢で臨み、恐れずに方針転換するときに最もうまくいくものです。ときには、課題を克服するためにより優れたアプローチや革新的なアプローチを見つける必要もあるでしょう。柔軟なマインドセットを持つリーダーは、常に新しいアイデアや別の視点を受け入れることができます。

問題解決は、リーダーが当然身につけるべきスキルであることは明らかです。そうであれば、次に課題に直面したときには、一呼吸おいて、これを問題解決のリーダーシップ能力を試す機会であると捉えましょう。

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