社員ライフサイクルの7つのステージ

「社員ライフサイクル」は、ある人材が組織を認知した瞬間から始まります。先進的な企業がライフサイクルプロセスの各ステージで社員と関係を築く最適な方法について考えれば、ライフサイクルにかかわる全員に大きなメリットがもたらされます。

社員のエンゲージメント | 所要時間: 10分
社員ライフサイクルの定義

社員ライフサイクルの定義

社員ライフサイクルは、実証済みのアイデアであるカスタマージャーニーマップから着想を得たものです。カスタマージャーニーマップでは、組織と顧客の関係がいくつかのセグメントに分けられています。ビジネスの専門家は、社員ライフサイクル全体を7部構成で考えます。

1.認知: 将来の社員が企業を認知した瞬間から始まり、その企業の求人に応募する瞬間まで続きます。

2.採用: 応募プロセス、あらゆるフォーム、面接、内定に至るまでの面接タスクが含まれます。

3.オンボーディング:オンボーディングステージは、新入社員が内定をもらってから仕事に慣れるまでの期間であり、入社初日を迎える前から始まります。

4.開発: 開発ステージでは、企業は社員の強みと弱み、関心領域を評価して、そのスキルの向上に投資します。

5.リテンション: 全ステージ中、最も長くなることが期待されるステージであり、社員の職場での満足度を高めて離職率を下げることを目指します。

6.退職: 退職は社員ライフサイクルの最後の段階ではありません。このステージには、退職願いの受理、退職時の面談、社員の最終出社日が含まれます。

7.アドボカシー: 終わりのないステージです。不満なく組織を離れた退職者は、最後の給料をもらった後も長きにわたって家族や友人に会社を優れた雇用主として薦めてくれます。

社員ライフサイクルが重要な理由

社員ライフサイクルが重要な理由

社員ライフサイクルのフレームワークを利用する人事チームは、より効果的な方法で投資を評価し、効果を測定し、社員体験を向上させることができます。その主なメリットは、次の2つに大別されます。

きめ細かい最適化が可能になる

社員ライフサイクルをステージに分けることで、人事チームは改善できる場所をより深く把握できるようになります。例えば、新入社員の離職率と採用コストを比較することで、人材採用プロセスを評価できます。

同じ役職を複数の求人プラットフォームで募集する場合、これらのスコアでA/Bテストを実施することもできます。活用できるデータが増えれば、組織は社員ライフサイクルを細部に至るまでカスタマイズして改善できるようになります。

プロセスよりも体験に重点を置くことができる

社員ライフサイクル戦略は、他の人材管理戦略よりも社員体験の測定に適しています。ビジネスリーダーは、正確なKPIを活用することでデータの奥にあるものを見極め、社員ライフサイクルの各ステージにおける社員の心理を理解できます。

例えば、より狭いアプローチをとる人事チームであれば、採用プロセスのスピードに基づいて「良い採用」ができたかどうかを判断するかもしれません。この場合、採用プロセスがスムーズでスピーディーであることは確認できるかもしれませんが、職務への真の適性はわかりません。

ライフサイクルに重点を置いた包括的なプランを採用している企業であれば、社員が職務に適しているかどうかを、入社初日から長い時間をかけて評価することができます。昇進率、エンゲージメント調査のフィードバックなど、ライフサイクル全体で収集されたデータは、より詳細な全体像を構築するのに役立ちます。

社員ライフサイクル戦略のメリット

社員ライフサイクル戦略のメリット

帰属意識の向上から優秀な人材の獲得まで、効果的社員ライフサイクル戦略は企業に幅広いメリットをもたらします。

リテンションの向上と離職率の低下

Society for Human Resource Management (SHRM)によると、新入社員1人当たりの平均採用コストは4,700ドル弱です。役職によっては、給与の数倍になる場合もあります。適切な社員ライフサイクル戦略により、これらのコストを大幅に削減することができます。

エンゲージメントの向上

エンゲージメントの高い社員は、生産性の高い社員でもあります。パフォーマンスレベルが非常に高く、より多くの目標を達成し、欠勤率が低下します。実際、社員のエンゲージメント向上を目的とした社員戦略は、燃え尽き症候群や職場ストレスのリスクを抑えることもできます。

社員体験の向上

社員ライフサイクルの考え方は、社員と組織の関係のすべてのステージで社員体験を向上させることを人事チームに促します。社員の安心を高めるためのコミュニケーションや取り組みを各ステージで実施すると、社員の帰属意識と目的意識が強くなる可能性が高まります。士気の高まりは社員から次の社員へと伝わり、ひいては顧客にも伝わるものです。

評判の向上

社員を大切にする組織は、評判も自ずと良くなります。社員のオンボーディング体制が優れており、成長に必要なトレーニングを提供しているという評判が広まれば、やがてその企業は働きたい職場となります。社員との関係が良好であるという高い評判は、企業が業界や顧客からより高い評価を受けることにもつながります。

新しい人材の採用

経験豊富な人材は、新しい仕事への応募前、採用プロセス中、応募後を問わず適切な待遇を受けられるかどうかを知りたいと考えます。徹底したライフサイクル戦略により、こうした不安を解消し、あらゆるビジネスの成功に欠かせない将来の社員にとってより魅力的な企業になることができます。

社員ライフサイクルを最適化する方法
社員ライフサイクルを最適化する方法

優れた人事チームは、社員ライフサイクルを最適化する方法を常に模索しています。社員ライフサイクルの各ステージでフィードバックを収集して分析することで、人事チームはKPIを設定し、長期的にパフォーマンスを向上させることができます。

以下では、7つのステージのそれぞれで社員体験を向上させる方法をいくつか見ていきます。

ステージ1: ビジネスの魅力を高める

優秀な人材が求人に応募する際に求めるのは、業界水準以上の給与や「あれば好ましい」特典にとどまりません。このような人材は、競合他社とは一線を画す企業でキャリアを築きたいと考えています。また、仕事に目的意識を求める応募者も増えています。自社の差別化ポイントを見つけるには、提供する商品やサービス、そして自社の「存在理由」について考えてみましょう。その結果に基づいて自社の価値を定義し、実現させましょう。

ソーシャルメディアでもっと積極的に活動できるのではないでしょうか。オフラインやオンラインのイベントで発信を増やせないでしょうか。ブランディング活動を強化すると、求職者にポジティブな企業文化を垣間見てもらえます。そのような文化こそ、優秀な人材が職場に求めるものです。

ステージ2: 合理的な応募プロセスを構築する

優れた応募プロセスは、シンプルで透明です。不必要な面接やモバイルに最適化されていないウェブサイトといった障害を取り除くことで、応募プロセスから去る候補者の数を減らすことができます。

応募者の期待値をできるだけ早期から定期的にコントロールしましょう。つまり、現実的な期限を設定してそれを守ること、そして応募している求人について正直に話すことが必要です。役職について大げさにアピールすると、短期的には応募者に好印象を与えられても、オンボーディングステージで離職率が高くなる可能性があります。

ステージ3: 適切な方法で新入社員を迎え入れる

Gallupによると、自社のオンボーディング体制が優れていると回答した社員はわずか12%です。残りの88%から賛同を得るには、新入社員が内定を承諾した瞬間から行動することが求められます。

翌週のチーム交流会に招待したり、入社前に開催される大規模な業界展示会のチケットがあることを知らせたり、入社後の数日間に期待されることを明確に説明したりしましょう。新入社員に歓迎されていると感じてもらうことが、職場関係の蜜月期間を開始するための最適な方法です。

ラインマネージャは、入社初日に新入社員に挨拶し、仕事を始めるためのログイン情報やパスワードなど、必要なものがすべて揃っていることを確認する必要があります。優れたマネージャなら、新しいチームメンバーとできるだけ早期に期待事項について話し合い、定期的な近況確認を行うための計画を立てます。

ステージ4: スキル開発への取り組みを強化する

最近のMcKinseyの調査によると、58%の労働者が、パンデミック以降はスキルギャップを埋めることをより優先するようになったと回答しています。優秀な人材を開発する必要性は、かつてないほど高まっています。

そのためには、まず社員と協力して、それぞれの強みと弱み、そして何に興味・関心があるのかを把握する必要があります。社員が雇用ライフサイクルの初期段階で学習や能力開発について期待していることを伝えている場合もあります。その場合は、その情報を参考にして、人事が社員の声をどのように聞き、尊重しているかを伝えましょう。

人々が求め、必要としているスキルの多くは、すでに職場で見つけられるようになっています。役割のローテーション、ピアコーチング、ピアメンタリングなどの可能性を探り、チームの仲間意識を醸成しつつ、コスト効率の良い方法でチームのスキルアップを図りましょう。

ステージ5: 優れた人材をより長く確保する

優れた雇用主は、社員のエンゲージメントを維持することで人材をつなぎとめています。ある世界的な調査によると、社員のエンゲージメントの最大の促進要因となっているのは帰属意識だそうです。ソフトウェア開発会社のQualtricsは、帰属意識を感じている労働者の91%はエンゲージメントが高いことを明らかにしました。

先進的なリクルーターはダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)への取り組みを最大化してチームのエンゲージメントを高める方法に注目しています。現行ポリシーの強化から、ダイバーシティとインクルージョンに関するトレーニングの取り組みまで、真の変化をもたらすために組織ができることはたくさんあります。

「離職防止のため管理するの面談」は、マネージャが社員のモチベーションを把握するためのアイデアとして普及しつつあります。この面談は、「仕事について変えたいことはありますか」、「会社を辞めたいと思ったことはありますか」のような質問をする絶好の機会です。こうした面談を定期的に実施し、社員の回答に基づいて対応することは、人材をつなぎとめるための効果的な手段となります。

ステージ6: 退職をより健全で幸せなものにする

退職時の面談は、雇用終了ステージで必ず行うものです。万全な体制の人事チームであれば、面談の席で「退職について考え直す要素は何かありますか」、「なぜ別の役職を探し始めたのですか」のような質問を投げかけます。難しい質問をすることで、企業はどうすれば人材を引き留められるかを学ぶことができます。

社員が落ち着いて面談を受けられるようにし、自分の意見に耳を傾けてもらえると感じてもらいましょう。そのためには、最初に社員の勤続に感謝し、最後に今後の連絡の計画を立てます。

ステージ7: 紹介の数と質を高める

退職体験がポジティブなものだった社員は、中立的またはネガティブな体験をした従業員よりもその企業を推薦する可能性が高くなります。元社員とその後も連絡を取り合い、企業の最新動向を知らせることでアドボカシーを促しましょう。

退職者は、退職時の面談に基づいて前雇用主が加えた変更について、特に興味を持っているかもしれません。退職者にコンスタントに情報を提供することで、友達や家族が新しい仕事を探しているときに、組織を思い出してもらいやすくなります。

相互につながった体験

社員ライフサイクルの各ステージには、独自のKPIや、社員体験を向上させるための幅広いアイデアがありますが、それらはすべてつながりあっています。

あるステージでの改善への取り組みが、他のステージに波及効果をもたらすこともあります。例えば、オンボーディングステージで学習と能力開発の目標を設定すると、それはリテンションステージでの社員の意見に影響します。このステージでは、社員は雇用主が自分のキャリアに投資してくれたことを再確認したいと考えるためです。

あるステージでアクションを起こすことで、ライフサイクル全体、ひいては企業にもメリットがもたらされるのです。

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