従業員体験戦略 (EX) を構築する6つのステップ

2020年以降、指導的立場にある人なら誰でも、仕事に対する期待について変革が起きたことをご存じだと思います。以後、従業員体験 (または EX) への関心は爆発的に高まっています。

従業員体験 | 所要時間: 10分
employee engagement - Workplace from Meta

2019年12月から2022年7月までの間に、「従業員体験」に関する Google 検索は3倍になりました。しかし、企業の61%1は依然として、基本的な従業員体験戦略しか持っていないか、従業員体験戦略を定義していません。考えられる原因は何でしょうか。何から始めるべきか迷ったら、当社のガイドを読んで、戦略を計画するための基本的なステップと、従業員体験を最優先にする必要がある理由について学びましょう。

従業員体験の進化

従業員体験の進化

従業員体験とは、組織が従業員の全体的な経験を意思決定の中心に置くことです。従業員体験は、かつては人事でトレンドとなっていましたが、主流のビジネス慣行となり、現在では組織全体の責任と見なされています。

Evolution of employee experience
Evolution of employee experience

なぜ組織で従業員体験を最優先すべきなのか?

従業員体験戦略を持つべきであるというエビデンスもあります。肯定的な従業員体験を報告した従業員は、エンゲージメントが16倍高く、組織にとどまりたいと思う可能性が8倍高くなります。従業員が自分たちの働いている組織の目的に刺激を受けると、生産性が225%向上するという調査結果もあります。

無料のピザやフルーツボウルを提供することだけが従業員体験ではない

アクション、テクニック、戦略のすべてを組み合わせ、従業員が自分の仕事、同僚、組織そのものとのつながりを深められるように働きかけを行うのが従業員体験です。帰属意識を育むことが最終的な目標となります。

そうすれば、結果として全社的なパフォーマンスと生産性の向上につながります。社員が気持ちよく仕事に取り組むことができれば、成果も上がるからです。

従業員体験というのは、従業員エンゲージメントのことではありません。従業員エンゲージメントが行動の変革を目的としているのに対し、従業員体験は文化の変革を目的としています。従業員体験は、組織での従業員の在職期間におけるすべての側面に関わりを持ちます。つまり、IT 部門からコミュニケーション部門、人事部門に至るまで、経営幹部の多数の役割の機能が関与することになります。

“今日の人材獲得競争において、従業員体験を焦点にする必要があります。候補者は、組織のために働くのではなく、組織と一緒に働ける職場に魅力を感じています。”

Meta、People Experience部門担当バイスプレジデント Brynn Harrington

従業員体験は全員の責任

Employee experience is everyone's responsibility

最近の調査2によると、従業員体験のことについて考える場面の40%は人事以外にあります。以下のマップは、この事実をわかりやすく視覚化したものです。

According to a recent study, 40% of employee experience moments of truth sit outside HR. The map below provides a good visualization of this fact.
成功する従業員体験戦略の立て方

成功する従業員体験戦略を立てる

構造、文化、および解決すべき問題は、すべての組織で異なります。あらゆる組織に適合する万能な従業員体験戦略は存在しません。

したがって、従業員体験戦略によって解決できるソリューションについて考える前に、組織固有の問題を完全に理解する必要があります。

開始するための6つのステップ

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Step 1 - Understand the context

従業員体験を実現するには、ほとんどの組織でその運営方法を大幅に変更する必要があります。人事、コミュニケーション、IT、財務などのさまざまな組織機能が、設計上互いにサイロ化されているためです。つまり、多くの組織は成功をもたらす正しい方法で運営していません。

成功を妨げる主な障害は2つあります。

1.オンボーディングから退職まで、従業員が抱える問題に関する詳細な内部調査を行っていない。

2.従業員体験の実現は1人だけで行うものではないという理解が不足している。つまり、従業員体験は経営陣のすべての部門にわたる共同作業によって実現する必要がある。

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Step 2 - Prioritize cross-functional relationships

コンテキストが理解できれば、従業員体験の解決はすべてのチームの共同作業によって行われるべきことで、人事だけの責任ではないことがお分かりだと思います。次のステップでは、メンバーがテーブルを囲んで従業員の経験について話し合う前に、部門横断的な関係を築き、従業員との共感を生むことから開始するのが重要となります。

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Step 3 - Create a mindset shift

従業員体験が適切に機能するには、組織の変化が必要です。従業員が抱える問題を解決する際、組織では主に戦術的なプロセスとソフトウェアについて考えますが、そうではなく、複数の部門、システム、および場所にまたがる体験を管理するという考え方に移行する必要があります。

たとえば、オンボーディングについて考えてみましょう。在職中の従業員とやり取りする方法について、多くの組織では次のような形を取っています。

  • 人事部門が採用と法務事務を担当
  • 給与部門が支払いのロジスティクスを処理
  • IT 部門が電話とノートパソコンのセットアップを担当
  • 施設部門がバッジとアクセスを提供
  • ラインマネージャが担当する仕事に迎える

その結果、新入社員は同じ情報を異なる部門に対して何度も提供することになり、まとまりのない複雑な体験をすることになります。

従業員体験戦略は、従業員を中心に置き、プロセス全体を見て、複数の部門にまたがるソリューションを提供することで、この問題を解決します。この例では、リソースのプラットフォームを改善して、人事部門、IT 部門、コミュニケーション部門にまたがる仕事をしやすくするのが良いかもしれません。

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Step 4 - Define roles across the organization

組織全体で変革に対する同意を得たら、役割を定義し、従業員体験に関する専任チームを配置する必要があります。また、従業員体験に関する部門の枠を超えた取り組みを行うと報われるようなインセンティブを用意することも重要です。誰もが報われる状況を作る必要があります。

人事の役割

従業員体験はまさに複数の部門にわたる取り組みですが、最終的には人事部門(HR)が主導権を握っています。HRのリーダーは、適切なチームを編成し、重点分野に優先順位をつけ、従業員のライフサイクルに合わせた全体的なプログラムと方針を設計する責任を負っています。最終責任はHRにあるのです。

コミュニケーションの役割

組織内でコミュニティを確立する際の最大のリスクの1つは、コミュニケーションの行き違い、あるいはそれ以上に、情報がまったくないことです。コミュニケーションの重要な役割は、正しい情報を全員に簡単に届けることができるチャネルを作って管理することにより、コミュニティを発展させることです。そうするには、メールだけでは不十分です。社員が会話をし、アイデアを発見し、興味を共有できるようにするためには、投資とイノベーションが必要なのです。

ITの役割

ITは従業員体験において重要な役割を果たすものであり、障壁を排除し、組織の目標を拡大させるテクノロジーを提供することにより従業員体験を向上させます。IT部門のリーダーは、人脈を構築し、話を聴き、社員を支援することで、ビジネスゴールをサポートします。

リーダー層の役割

リーダー層は、従業員体験をビジネスの優先事項として公の場で声高に支持することで、その成否を左右することができます。CEOは、新しい働き方を身をもって示し、共感を構築し、組織全体に浸透させたい価値観を体現するように枠を越えて動く必要があります。

操作設計と製品管理の役割

多くの企業には機能もスキルセットもありません。そうした理由から、従業員体験戦略で真の成功を収められていないケースが多くあります。これについては、次のステップで説明します。

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Step 5 - Do the research and make it a habit

役割が定義され、組織全体の同意が得られたら、次は調査を開始します。Meta では、ユーザーエクスペリエンス (UX) に対するものと同じ方法で従業員体験にアプローチします。つまり、デザイン思考に焦点を当ててアプローチします。

デザイン思考とは、具体的にどういう思考なのでしょうか。

これは、共感に始まり、テストと実装で終わる継続的な改善のサイクルのことです。一度サイクルが終われば、これを再度行います。つまり、この継続的な反復のプロセスがデザイン思考なのです。

“私たちは、リーダーとして望む経験を得るために明確な長期的な業績目標を描き、従業員が自分たちに何を必要としているのか、自分たちが彼らから何を必要としているのかについて互いに会話を続け、学んだことに基づいて適応する責任があります。”

Meta、People Experience部門担当バイスプレジデント Brynn Harrington

このアプローチを従業員体験に適用すると、次のようになります。

Process chart

共感する

まず、従業員に関するあらゆることを学ぶ必要があります。これには、完全なツールキットがあります。調査からフォーカスグループまで、直接的な観察研究も重要です。これは文字通り、従業員と一緒に座って、彼らが仕事をしているのを見る研究のことです。

人事は調査を通じて、会社のイントラネットで休暇を予約するのは複雑であることを知りました。これは、リクエストを行うための適切な情報を見つけるのが難しいためです。人事は、従業員がこの作業を完了するのを観察することでフォローアップしますが、予想外のことが観察されました。各従業員は、タスクを完了するための正しいイントラネットスポットに移動するリンクを探すため、人事にいる特定の同僚の名前を検索していたのです。

定義する

従業員が直面している問題が明確になったら、これを修正するために何が必要かを正確に判断できるようになるはずです。

着想を得る

XFN のステークホルダーを集め、解決策を考え出すための作業セッションを行う必要があります。

プロトタイプを作る

ソリューションの構築を開始します。

この段階では、小さく始めて、最も早く実装できるソリューションを試します。

人事からの正しい情報にアクセスできないことから、代わりに彼らのメールアドレスを検索していた従業員の例をもう一度使用してみましょう。当面のソリューションは、人事の同僚と協力して件名を最適化することです。そうすれば、従業員はソリューションをすばやく発見できるので、人事が彼らをフォローアップできるようになります。

テストする

うまくいきましたか?続けて頑張りましょう。

実装が完了したら、測定、フィードバックの取得、反復を行うテストを開始します。

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Step 6 - Measure the success

従業員体験戦略を持つことが、従業員の生産性、定着率、およびエンゲージメントを向上させる鍵であることを示す証拠もあります。ただし、従業員体験には複数のタッチポイントがあるため、まずは組織に固有の特定の取り組みをそれぞれ測定する必要があります。その後、それを改善してプロセスを再開します。フィードバックを行うことを習慣にする必要があります。それにより、改善と反復の絶え間ないサイクルが生み出されます。

Feedback graphic
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今こそ従業員体験を実現する時

今こそ従業員体験を実現する時

組織内の従業員体験を最優先にした行動を開始するのに、遅すぎるということはありません。従業員体験戦略は、従業員に注意を払うことを基本にする必要があります。つまり、彼らに耳を傾け、観察し、実用的な洞察を得ることで、何をすべきかがわかります。Workplaceがこれにどのように役立つのかご紹介します。


出典

1: WTW Employee Experience Survey, 2021

2: TI People, ‘The State of Employee Experience’, 2019

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