上手にデリゲーションするには?正しく行うための14か条

「デリゲーション」は、リーダーシップやマネジメントに関するスキルの中で、最も注目を浴びるものではありませんが、最も重要なものの1つです。この記事では、デリゲーションを効果的に行う方法をご紹介します。

チームのコラボレーション | 所要時間: 6分
Delegate efficiently
デリゲーションとは

デリゲーションとは

デリゲーションとは、権限と責任を人から人へと委譲することです。ビジネスにおいては、通常、マネージャやリーダーがほかの人に業務や責任を委譲することを指します。委譲する相手は、特定のスキルを持った同僚、あるいはチームの部下かもしれませんし、外部の協力者ということもありえます。

デリゲーションを行う理由には、「よりハイレベルな業務の時間を確保するため」「モチベーションを与えるため」「特定のスキルを持った人をプロジェクトに加えるため」「顧客との将来の関係を見据えて」など、さまざまなものが考えられます。

デリゲーションを効果的に行うには、慎重さが求められます。負荷のかかる業務をただ単に引き渡したり、責任を丸投げすればいいわけではないのです。業務を全面的に任せた場合であっても、全体としての責任は共有しなければなりません。

誰もが初めからデリゲーションをうまく行えるわけではありません。しかし、何から何まで自分1人でこなせる人もいません。そのため、マネージャはデリゲーションの方法を学び、周囲にもデリゲーションを促す必要があるのです。

コミュニケーションツールや、ワークストリームソフトウェア、プロジェクト管理ソフトウェアの登場で、デリゲーションは一段と簡単になりました。とはいえ、必ずしも適切なタイミングや効果的な方法で行えているわけではありません。

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なぜ職場におけるデリゲーションが重要なのか?

なぜ職場におけるデリゲーションが重要なのか?

デリゲーションを効果的に行えば、すべての社員に大きなメリットが生まれる可能性があります。以下にその例を挙げます。

メンバーやチームにモチベーションを与え、やる気にさせる

さまざまな職位のメンバーを仕事や意思決定に巻き込めば、エンゲージメントや社員のモチベーションが高まり、仕事がもっと面白く、やりがいのあるものになります。社員が特定の業務のやり方だけでなく、責任を持って対処し、時間をやりくりし、自律的に動き、ほかの人を管理する方法を学べるので、学びやトレーニングも後押しできるでしょう。

より安全な環境で学べる

仕事自体は任せつつも全体的な責任は共有し、見守ることで、マネージャは時間が生まれ、社員は比較的管理された安全な環境で新しいスキルを学ぶことができます。

生産性が向上する

Gallupが、その年に急成長した米国の民間企業のCEOについて調べたところ、効果的なデリゲーションを行っている傾向の強い企業では、デリゲーションの傾向が弱い企業よりも3年間の平均成長率が大幅に高く、収益も多くなっていたことが分かりました。

マネージャの収益力が向上する

Harvard Business Reviewの調査では、法律事務所でアソシエイトに仕事を任せているパートナーは、そうでないパートナーよりも収入が中央値で20%以上多くなっていることが分かっています。トップ層ではその差が50%以上にも達しています。

スキルと知識を伝達できる

デリゲーションからは、新しいスキルや知識を学んだり、既存のスキルを伸ばしたりできるチャンスが生まれます。仕事へのアプローチ方法が広がるほか、プロセスや顧客関係の陳腐化を防ぐことにもなります。

リスクを分散できる

業務や顧客関係が属人化していたり、少人数に完全に依存していたりするのはリスキーです。キーパーソンが不在の場合や、チーム内で人間関係の衝突があった場合を想像してみてください。デリゲーションしておけば、支障が生じてもプロジェクトを継続できます。

ポジティブな文化が醸成される

適切なサポートの下で責任を与えられれば、社員は「信頼されている」「大切にされている」と感じ、仕事へのエンゲージメントが高まります。これは、離職者を減らし、トレーニングやキャリア開発への再投資を確保することにもつながる可能性があります。

リーダーシップを受け継ぐ

成功しているリーダーやマネージャは、いつまでも現状維持を続けていては成長や発展を見込めないことを知っています。継続的なリーダーシップの枠組みを確立すれば、存続が確実なものになり、ビジネスの将来が1人のリーダーや数人の幹部に依存することがなくなります。

いつデリゲーションすべきか?

いつデリゲーションすべきか?

状況や業務によってはデリゲーションが適さないこともあります。デリゲーションに理想的なのは、業務を明確に切り分けることができる場合や、業務が特定の担当者のスキルと密接に結び付いている場合、または新しいスキルを学び、伸ばす準備ができている社員がいる場合です。

初めてデリゲーションするときは、一からトレーニングと説明をするための時間を余分に確保し、適宜、作業のやり直しやフィードバックもするとよいでしょう。正しく行うための時間があれば、デリゲーションは効果的な成長戦略の重要な要素になりえます。

なぜデリゲーションは難しいのか?

なぜデリゲーションは難しいのか?

デリゲーションをしなかったり、デリゲーションが上手くいかなかったりするのは、ビジネスにとって大きなリスクになります。たとえそれを分かっていても、デリゲーションは難しいと感じるマネージャやリーダーは多いようです。

実際、マネージャの多くはそもそもデリゲーションをしません。一から十まで自分でやらなければ仕事を正しくできないと思い込み、責任を委譲できないと感じているのです。そして、「すべて自分がやらなければ」「24時間365日働かなければ」と感じ、さらには「ビジネスの成功は自分一人にかかっている」とまで思い詰めてしまうのです。

その結果、ストレスを感じて燃え尽き症候群になったり、リスクを取る行動や新しい発想ができなくなったり、全体的な生産性が低下したりといったことになりかねません。そして遂には、デリゲーションを怠ったために、ほかの人に任せられる業務が大半であるにもかかわらずキャパオーバーになってしまうのです。マネージャやリーダー1人が絶えず火消しに走っているようでは、それがボトルネックになり、ビジネスで先手を取れずに後手に回ることになります。

マネージャがデリゲーションを上手く行えないもう1つの理由は、業務を誰かに任せた場合、自分でやるよりも説明や見守り、手直しに余計な時間がかかってしまうと感じていることです。業務をこなすスキルが部下に不足していると思い込んでいるために、育成に取り組めていないのかもしれません。また、業務をコントロールできなくなったり、権限を失ったりすることを恐れている可能性もあります。

デリゲーションを怠っていると、エンゲージメントや信頼にも徐々に悪影響が及びます。社員は、自分の将来に投資してくれないと受け止めるでしょう。スキル開発やキャリアアップの機会は決して与えられないと感じてしまうかもしれません。

デリゲーションは、方法が効果的でなかったり中途半端だったりしても失敗します。せっかく社員やチームに仕事の責任を与えても、あまりにも細かいことまで管理すると、責任の所在が曖昧になり、信頼がさらに低下したり、単純な業務を遂行するのにも二重に手間がかかったりしてしまいます。

デリゲーションの能力不足は珍しい問題ではありません。タイムマネジメントに関する研究では、調査対象企業のほぼ半数が、社員のデリゲーションスキルに懸念があると回答しました。

しかし、デリゲーションの方法について何らかのトレーニングを提供している企業はそのうちのわずか28%に留まっていました。では、そのために何をすればよいのでしょうか。重要なポイントを以下に紹介します。

効果的なデリゲーションのための14か条

効果的なデリゲーションのための14か条

1. 自分1人ではすべてをこなせない(こなすべきではない)ことを受け入れる

ビジネスが成長して発展すれば、仕事や業務量も増えます。マネージャには、将来に備えて新しいことや工夫をするための余裕が必要です。その余裕を作るための初めの一歩は、ほかの人でも同等にこなせる業務は割り振ることです。

2. デリゲーションを前提にする

デリゲーションをキャパオーバーや緊急時の解決策と考えるのではなく、ビジネス戦略に組み込むようにしましょう。どうしたらデリゲーションを最後の手段ではなく当たり前のことにできるかを考えてください。社員に対しては、もっと責任を担えそうな場合には自ら志願したり、進んでより大きな責任を担ってよいことを伝えましょう。

3. 入念に準備する

タスクとスケジュールを見て、安全かつ現実的にデリゲーションできる業務、プロジェクト、責任を見極めましょう。

4. テクノロジーに投資する

オンラインのワークストリームプラットフォーム、プロジェクトマネジメントソフトウェア、レポートソフトウェア、モニタリングソフトウェア、協力型のチームプログラムは、すべてデリゲーションを容易にするための手段になります。こうしたものに投資をすれば、デリゲーション文化の確立に真剣であることがチームに伝わります。また、業務の変革や、パフォーマンスのチェック、成果のモニタリングを行い、将来に向けてデリゲーションの土台を作ることもできます。

5. いつどこまで任せるかを決める

デリゲーションの前に、ブリーフィングのための時間を十分に取り、相手が理解したことを確かめましょう。また、誰が遂行責任を負い、誰が説明責任を負うのかも明確にします。

6.社員の強みが生きるようにする

社員一人ひとりの強みと弱みを知りましょう。それぞれが自分のスキルと才能を最大限に活かし、必要なときにはサポートしてもらえるようなデリゲーション戦略を立ててください。

7.権限を明確にする

マネージャが全体的な責任を取る領域と、相手に何を期待するのかを明確にしましょう。社員が自主性を持って自由に仕事を進め、疑問や問題が生じたときにはそれを遅滞なく明確に報告できるような報告体制を整えてください。

8. 賛同を得る

責任の度合い、業務量、モニタリング、報告、業務の目標について、全員が納得できるようにします。

9. 期待することを明確にする

組織としての目的と目標を定め、どの程度の報告や連絡を行うかを決め、何が期待されているのかを全員に理解させましょう。締め切りとマイルストーンを決め、同意を得てください。

10. 背景を説明する

なぜその業務やプロジェクトを任せるのか、どの程度の裁量や権限を与えるつもりなのかを明確にしましょう。取引先や顧客が関係する場合は、誰が社外に対して責任を持つのかをきちんと伝えます。

11.全面的に任せる

必要な情報をすべて提供し、アドバイスや役に立つリソースがある場合はそれも伝えます。仕事の進め方を事細かに説明したくなっても、ぐっとこらえましょう。

12. 一歩退いて見守る

一般的にここがデリゲーションの最も難しいところですが、効果を上げるにはこれが欠かせません。任せたプロジェクトに口を出したくなる衝動に駆られることもあるでしょうが、一歩退いて、解決が必要な問題や不明点が出てきたときは担当者やチームのほうから自分に連絡してもらうようにしましょう。自分が関わりつつも、主導権はほかの人に握らせてください。

13. 質問は受け付ける

質問に答えられるように準備しておきましょう。ただし、「こうやったらいい」と答えるのではなく、やり方は任せるようにしてください。

14.フィードバックする

フィードバックして相手の信頼と自信を高めましょう。「業務をどのように遂行しているか」だけでなく、「チームや個人としてどのように責任を持って取り組めているか」にも着目します。ミスを受け入れ、そこから学び、前向きな姿勢で知識を伝達してください。「自分だったらこうする」などと比較することはなるべく避け、「どうすればもっとよくできるか」に集中しましょう。そうすれば、チームは今後の新しい仕事に挑むための自信とスキルを身につけることができます。

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